久原孝俊

導入遺伝子を子孫動物に伝達するトランスジェニック霊長類の初めての作出

Gordon らによりトランスジェニック(遺伝子導入)マウス作出の報告がなされて以来、すでに30 年近くの歳月が流れた。この画期的な成果は、たとえばヒトの遺伝子の機能を培養細胞の中(in vitro)ではなく、生きた動物の中(in vivo)で研究することができるという大きな恩恵を医学生物学研究の分野にもたらした。以来、マウス以外の動物種においても多くの遺伝子改変動物が作出され、それら遺伝子改変動物は、基礎的および応用的な生物学、医学の分野において大きな役割を果してきた。Nature 2009年5月28日号の表紙には、「医学生物学におけるスーパーモデル」という見出しのもとに、トランスジェニックマーモセットの写真が掲載されている。このトランスジェニックマーモセットは、わが国の複数の研究チームによって作製された遺伝子改変動物であり、特筆すべきは、導入遺伝子が子孫動物に伝達されたことである。今回は、このトランスジェニックマーモセットにかかわるニュース記事を紹介しよう。