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庫本高志 江戸時代の明和年間(1764〜71年)、ネズミを愛玩動物(ペット)として飼育することが大坂で流行し始めた。ペットとしてのネズミに求められたものは、飼いならしやすさと繁殖性、そして、誰もみたことがないような珍しい毛色や模様を備えていることであった。毛色としては白毛、玉子色、薄紫色、藤色などが、また、模様としては、斑まだら、熊斑、鹿斑などが珍重されていた。 『養よう鼠そ玉たまのかけはし』(上下巻)は、安永4年(1775年)に大坂で発行されたネズミ飼育書の第一号である。作者は春帆堂主人とあるが、本名は明らかでない。彼はネズミの愛好家で、珍しいネズミを多数飼育していた。同じ趣味を持つ仲間たちとサークルを作って情報交換を行い、自分の持つノウハウを仲間たちと共有するためにこの本を出版した。子どもでもわかるようにと、挿絵を効果的に用い、狂歌まで添えられている(図1a、b)。 内容はネズミの紹介と分類に始まり、飼育法、繁殖法、病気の治療法から鳥家とや(飼育ケージのこと)の作製法にまで及ぶ。作者は、飼い方を覚え、上達すれば、自ら珍しいネズミを手に入れることができると読者を励まし、そのような“宝”、すなわち、“玉”を手に入れるための“かけはし”としてこの本を書いたのである。
庫本高志
江戸時代の明和年間(1764〜71年)、ネズミを愛玩動物(ペット)として飼育することが大坂で流行し始めた。ペットとしてのネズミに求められたものは、飼いならしやすさと繁殖性、そして、誰もみたことがないような珍しい毛色や模様を備えていることであった。毛色としては白毛、玉子色、薄紫色、藤色などが、また、模様としては、斑まだら、熊斑、鹿斑などが珍重されていた。
『養よう鼠そ玉たまのかけはし』(上下巻)は、安永4年(1775年)に大坂で発行されたネズミ飼育書の第一号である。作者は春帆堂主人とあるが、本名は明らかでない。彼はネズミの愛好家で、珍しいネズミを多数飼育していた。同じ趣味を持つ仲間たちとサークルを作って情報交換を行い、自分の持つノウハウを仲間たちと共有するためにこの本を出版した。子どもでもわかるようにと、挿絵を効果的に用い、狂歌まで添えられている(図1a、b)。
内容はネズミの紹介と分類に始まり、飼育法、繁殖法、病気の治療法から鳥家とや(飼育ケージのこと)の作製法にまで及ぶ。作者は、飼い方を覚え、上達すれば、自ら珍しいネズミを手に入れることができると読者を励まし、そのような“宝”、すなわち、“玉”を手に入れるための“かけはし”としてこの本を書いたのである。