遺伝子組み換えカイコを使った養蚕の未来

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木内信

かつて、わが国の主要な輸出品目といえば生糸であった。そして、その生糸を生産するために各地で養蚕が行われていた。養蚕とは、蛾の仲間であるカイコを飼って繭を作らせ、その繭から糸をとることである。戦前までは北から南まで、日本中でカイコが飼われていた。たとえば、白川郷の合掌造り民家の屋根が急勾配なのは、雪を下に落とすためという理由のほかにも、屋根裏部屋を養蚕の場として活用するためでもあった。日本神話や昔話にもカイコが登場するように、わが国の歴史上、これほどまでに生活に密接に関わっていた昆虫は他にないだろう。

明治時代に殖産興業の一環として建設された富岡製糸場(群馬県富岡市、図1)をみればわかるように、養蚕は現在の自動車産業と同等なくらい産業の中心であったが、戦後は中国産の安い生糸におされるかたちで衰退してしまった。現在では、(群馬県などを中心に)全国でわずか1,000戸ほどで養蚕が行われているに過ぎない。

しかし、21世紀になり、再びカイコが脚光を浴びている。私たちは、遺伝子組み換えカイコを様々な分野に活かす研究に取り組んできた。その事例を紹介しながら、カイコと、養蚕の未来について考えていきたい。