学習と脳の可塑性

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高橋宏知

脳は、どのように外界情報を処理しているのだろうか。また、学習や経験に応じて、どのようにその処理方法を変化させているのだろうか。このような疑問は、脳科学分野で昔から盛んに研究されてきたが、未だはっきりと解明されていない。

視覚情報は網膜で神経信号に変換されたのち、脳幹の神経核を経て、大脳皮質の視覚野で処理される。伝統的な仮説では、図2aに示したように、視覚野は画像から輪郭、色、大きさ、位置などの様々な特徴を分解して抽出し、高次連合野がこれらを再統合すると考えられてきた。しかし、実際の情報処理は、低次視覚野から高次連合野への一方通行ではない。実は、図2bのように、高次連合野から低次視覚野への入力が非常に多いのである。たとえば、脳幹から大脳皮質への入口である一次視覚野では、高次領野からのトップダウン的な入力が80%以上で、脳幹からのボトムアップ的な入力は20%に満たない。すなわち、ここでの情報処理では、外界からの入力情報よりも脳の内部情報の影響が圧倒的に大きいる。したがって、図1を見てモナリザだと確信すると、トップダウン的な情報によりますますモナリザに見えてしまうのである。一方、ふてくされたモナリザの存在を知っていると、高次連合野が低次視覚野へ目元に注意を払うようにと指示する。そうすると、もはやモナリザには見えなくなる

このように、知覚は脳の内部情報に完全に依存する。こうした特徴は視覚だけに限らず、脳内のほとんどすべての情報処理に当てはまると言って過言ではない。