脳の発生・発達における神経幹細胞

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篠原広志,大隅典子

ヒトの脳にはおよそ1,000億の神経細胞が存在し、その数倍におよぶグリア細胞と呼ばれる細胞が、神経細胞の機能を調節している。このような脳の中の細胞たちは、「神経幹細胞」と呼ばれる“タネの細胞”から産み出される。1個の受精卵の状態から個体や脳がつくられるときには、まず神経幹細胞の数が増え、さらに多数の神経細胞が産み出されなければならない。この過程は「神経新生」と呼ばれ、進化において脳のサイズが大きくなっていった過程でも重要だったことが想像される。

本稿では、高次な機能を営む哺乳類の大脳皮質をモデルとし、神経新生における神経幹細胞の増殖と分化に関して、最近の知見を紹介する。