脳と心の分子メカニズム -大きな遺伝子効果を利用した統合失調症の病因研究-

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新井誠,市川智恵,糸川昌成

統合失調症の遺伝子研究は、主にゲノム上の個人差(1塩基の配列違い;多型)を患者群と対照群で比較し、統計学的に有意に患者群で高い頻度で認められる多型を、遺伝的リスクファクターとして解釈している。1990年代初頭、100検体単位で検討が始められたが、結果が報告者間で食い違うことが多く、90年代のゲノム研究は混迷を極めた。1塩基の違いがもたらす遺伝子機能への影響が小さいことが結果のばらつきをもたらすといった反省もあり、弱い遺伝子効果の検出力をあげるために、検体は500から1,000の単位へと拡大され、2000年以降は万の単位で検討されるビッグサイエンスが欧米を中心に発展した。しかしながら、それでもなお統合失調症の病態を明確に説明するには矛盾した結果が散見され、欧米はさらに大きなコンソーシアムを組み、またアレイなどを用いて一度に500,000の塩基を検討するといった、目もくらむような大型研究が行われるに至っている。

我々は、こうした小さな遺伝子効果の検出を追求する世界的潮流にあえてくみせず、まれな変異や染色体異常など、大きな遺伝子効果をもたらす症例をプロトタイプとして発見することで、一般症例の病態を増幅した生体内変化として同定するという独自の手法を進めてきた。こうした取り組みで得られた2つの成果について紹介する。