クローン研究でわかってきた生殖細胞の謎 ―エピジェネティックメモリー―

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山縣一夫,若山照彦

極端にいえば、約60兆個の細胞で構成されている我々の体には、体細胞と生殖細胞という、たった2種類の細胞しか存在しないと考えられる。なぜこんなに極端な分類をするのかというと、それは生殖細胞があまりに特異な性質を持つことによる。

個体の死とともに、いずれは必ず終焉を迎える体細胞とは異なり、生殖細胞はパートナーのそれと合体しつつ新個体として存続し続ける。また、生殖細胞(配偶子)は受精のために高度に分化した細胞であるが、その反面、体を構成するすべての細胞は生殖細胞から生まれることから、最も未分化な細胞であるともいえる。これら、生殖細胞の特異的な性質を評して、東北大学の松居靖久先生は「個体の中にありながら、独自のライフサイクルを持つ独立した生きもののようにもみえる」と表現している。

図1は、哺乳動物受精研究の父である柳町隆造先生が、生殖細胞の面白味を説明する際に用いたものである。また、「遺伝学的にみると、体細胞は生殖細胞の運び屋にすぎない」というウィルソン(Edmund B. Wilson)の言葉も引用している。これらの言葉からもわかるように、生殖細胞はただ特異な存在というだけでなく、生命にとって根源的かつ最も重要な細胞であり、唯一無二の存在といえよう。