トガリネズミ、カモノハシ毒の謎に迫る ―哺乳類の持つ毒の科学―

加算ポイント:3pt

商品コード: adma0238

¥ 315 税込

関連カテゴリ

  1. 生命科学

商品について

北将樹

動物由来の天然毒には、フグ毒テトロドトキシンや下痢性貝毒オカダ酸など、ユニークな構造や切れ味鋭い生物活性を持つものが多い。これらの毒はイオンチャネルやホスファターゼの特異的な阻害剤であり、薬理学や生理学における有用なツールとして使われてきた。さらに最近、イモ貝由来の麻痺性ペプチド、ω-コノトキシンがモルヒネ耐性の末期がん患者の疼痛治療薬として用いられるなど、天然毒から画期的な新薬が開発されることも期待されている。

毒を持つ哺乳類は非常にまれであり、トガリネズミの仲間とカモノハシのみが知られている。トガリネズミは唾液に毒を持ち、獲物に注入して麻痺させることで、効率よく捕獲している。また、北米に生息するブラリナトガリネズミの毒はさらに強力であり、自分より大きなカエルやネズミも捕らえて餌としてしまう。私たちは最近、この毒が哺乳類の持つタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の一種であることを見出した。哺乳類由来で初めて構造が明らかになった毒であり、医薬品開発に役立つ新たな生理機能の解明が期待される。本稿では著者らの研究を中心に、哺乳類の持つ毒の科学について、最近の進展を紹介する。