毒と薬のはざま

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海野隆

「毒にも薬にもならない」という言葉がある。これは何の役にも立たないことを意味する。逆にいえば「毒」でもそれなりの意味があるということになる。

南アメリカの原住民は、クラーレというツツラフジ科の植物から抽出した毒を矢じりに仕込んで、狩猟を行っていたことは広く知られている。クラーレの成分はd-ツボクラリンであり、神経筋接合部のニコチン性アセチルコリン受容体に結合し、アセチルコリンの結合を阻害することで、運動神経の興奮を骨格筋に伝えられなくするのである。これによりクラーレを仕込んだ矢を受けた動物は動くことができなくなる。彼らは「毒」を生活に役立てていた。

クラーレの筋弛緩作用は、手術の際、ヒトにも筋弛緩剤として利用されていた。筋弛緩剤は治療薬ではないが、筋弛緩剤として使われる時、クラーレの「毒」は「薬」としての役割を担うことになるのである。