沈黙の臓器に忍び寄るウイルス ―ウイルス性肝炎―

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脇田隆字

肝臓は沈黙の臓器とよばれる、体内最大の臓器であり、代謝調節を司る。肝臓病は自覚症状に乏しいことがあり、気づいた時点で病気が進行していることもある。肝炎は古くは黄疸により診断され、「カタル性黄疸」と呼称されていた。肝炎の原因はさまざまだが、感染性肝炎にはA型とB型の2種類があることが、1940年頃に報告された。A型は経口感染して潜伏期が比較的短いタイプで、B型は血液を介して感染し、潜伏期の長いタイプと考えられた。感染性肝炎の多くはウイルス性であり、1960年代にB型肝炎ウイルスが、70年代になりA型肝炎ウイルスが発見された。その後もウイルス探索が続けられ、現在ではA型、B型、C型、D型、E型が確認されている(表1)。

ウイルス性肝炎には急性肝炎と慢性肝炎がある。感染したウイルスの種類や感染時期により、発症する肝炎の種類や予後が異なる。肝臓をおもな標的臓器とするウイルスを肝炎ウイルスとよび、肝炎ウイルス以外にもサイトメガロウイルスやEBウイルスなどは肝炎を引き起こすことがあるが、標的臓器が肝臓のみでなく全身臓器に感染するため、肝炎ウイルスには含まれていない。本稿では各肝炎ウイルスの最近の話題を中心にまとめる(表2)。