新型インフルエンザのパンデミック対策 ―鳥インフルエンザから新型インフルエンザ発生への危惧と準備の必要性―

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岡部信彦

インフルエンザウイルスには、A型B型C型の3種類があり、B型C型インフルエンザウイルスはヒトにのみ感染をするが、A型インフルエンザウイルスには144種類もの多くの亜型があり、ヒト以外にもさまざまな動物が感染することが知られている。ヒトはこの多種類のA型インフルエンザウイルスのうちのたった2種類(A/H1N1:ソ連型、A/H3N2:香港型)にしか、今感染していない。そのほかでは、かつてアジア型といわれ、すでに消失したA/H2N2が知られている程度である。

A型インフルエンザウイルスには動物による種特異性があり、ある動物から他の動物への感染はまれであり、鳥のインフルエンザウイルスがヒト社会に直接入り込んでくることはない、と考えられていた。しかし1997年、香港におけるインフルエンザウイルスH5N1のニワトリやアヒルなど家禽類の間での流行時に、6名の死亡を含む18名の患者発生が確認されたことで、偶然的な発生とはいえ、膨大な数のニワトリなどが鳥のインフルエンザに感染した場合、インフルエンザウイルスが感染したニワトリなどからヒトへ、種を超えた直接の感染があり得ることが明らかになった。

少なくとも今のところ、この種を超えてヒト社会に入り込んだ鳥のインフルエンザウイルスがヒトの間で次々と感染が拡大している事実はない。しかし、鳥のインフルエンザウイルスが自然界の中でヒトに感染しやすい形に(急速に、あるいはゆっくりと)変異し、そして馴化することがあれば、ヒト社会で誰もが免疫を持っていない新たなA型インフルエンザウイルスとして地球規模で大流行する(pandemic:パンデミック)、という可能性が危惧されているところである。