インスリンの発見から糖尿病治療薬の開発へ : 第1部 〜インスリンの発見と その生合成・分泌〜

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池田衡

20世紀は、医薬分野が飛躍的に発展した世紀である。とくに1921年に発見されたインスリンは、その翌年には重篤な糖尿病患者の少年に投与され、劇的な効果をあげたことは特筆に値する。当時不治の病であった糖尿病に対して人類が最初に得た対抗手段であったことから、その発見は強烈なインパクトを与え、また、その後の内分泌学ならびに臨床医学の発展に大きな貢献をもたらした。インスリンは膵臓で生合成され、血糖値の維持を司るホルモンであることは現在よく知られている。では、膵臓はどこにあるかといわれると戸惑う人も多いと思う。膵臓は胃の後ろ側に位置し、外分泌ホルモンと内分泌ホルモンを生合成・分泌するマルチ機能を有する臓器である。

ラジウム、ペニシリンなど偉大な発見の多くは、ある種の幸運が関与したといわれているが、インスリンを発見したバンティング(F. Banting)とベスト(C. H.Best)にも幸運の女神が微笑んだ。もちろん、執念、着想、努力なしには成し得えなかったことはいうまでもないが……。

人類が何十万年にも及ぶ飢餓の時代を生き延びることができたのは、摂取エネルギーの効率よい利用を司るインスリンのおかげである。しかし、先進国に見られる飽食時代の今、インスリンとメタボリックシンドロームの関連は無視できない。本稿では、インスリンの発見、生合成・分泌、作用発現機序、疾患とのかかわりおよび臨床応用に分けて概説し、その発見にまつわるエピソードや生命維持のための神秘なしくみに触れたい。