生き物たちに向けてきたまなざし : 第5回 昆虫が敲いた新科学の扉 1 顕微鏡下昆虫に見た驚異と内部構造から

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西村顯治

人々が日常生活で示す関心は、ヒトを含めた脊椎動物に偏りがちである。生態系の一例として自身の周囲を思い浮かべても、それを構成する菌類や細菌類にはほとんど注意が払われないし、同じ動物界でも無脊椎動物となると、すでに縁遠く感じよう。しかし、その一方では、万人の関心が熱帯雨林や海洋などマクロ生態系の動態にまで拡がらざるを得ない現実がある。そうしたグローバルスケールな課題に応じて、生き物全般についてますます深く広範な理解が要求され、やがて、生き物の認識に質的な変化が起こるのではと期待される。

情報蓄積が進んだすえ、あたかも臨界点に達したかのように新しい視点が開かれた事例は、過去にもある。脊椎動物に偏っていた自然誌の記述対象が無脊椎動物へ広がったことが、ライフサイエンス新展開の機縁を作ったのだ。なかでも昆虫は、近代科学の形成期に深くかかわった。さらに、形態と機能にまつわる論議を通じての体制概念構築には、無脊椎動物が重要な役割を果たした。この稿では、前者について取り上げることとする。