人間は模倣行動で何を得ているのか? ―赤ちゃんの模倣と文化学習―

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大藪泰

模倣は人間の心の本質的機能である。人間の赤ちゃんは、新生児期から顔の運動模倣を実行し、やがてその模倣機制は他者の意図を自らの心的領域に内化する方向に向かう。赤ちゃんの模倣は、他者の身体の動きの形態を真似し、その行為の目的を達成すればよいわけではない。そこには、他者が目的達成のために選択した手段と、その手段を選択した意図を共有しようとする、精神的にきわめて高次な働きがすでに営まれている。

本稿では、最初に情動を含む行動のきわめて高次な共有形態である原初模倣に触れ、次に相手の意図理解に基づいて模倣の手段選択を行う意図模倣を取り上げ、最後に赤ちゃんの模倣行動と文化学習について論じたい。