生命科学の進展に寄せて : 関係性の科学の構築を目指して

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  1. 生命科学

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林良博

生命科学という言葉が定着して久しいが、これまで、その本来意味する範囲の、ごく一部分だけが強調されてきたように思う。生命科学は、生命体の神秘を追究する学問といった狭い範囲で定義されることが多いが、もとのライフサイエンス(Life Science)のLifeには、生活という意味があり、ライフサイエンスは、個々の生命体同士のかかわりや生命と環境のかかわりなど、生きること、生活にかかわるすべてを包括した総合的な科学を意味するものであり、これを生命体や命だけをあわらす「生命」科学と訳するのがふさわしいかどうかは議論があった。本来の意味をあらわすためには、生活科学と訳してもよかったと思うが、訳語がどうであれ、生命というものは、他の個体や種、まわりの環境などとのかかわり、関係性の中で生きている。環境保全、生物多様性の問題など、現在、生命科学には、これまでのような個々の現象の追究だけではなく、本来の意味に含まれる、それぞれのかかわり、関係性を含めて総合的に考えていくことが求められている。