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村江達士 本稿の第1 回において、生命の起源論と化学進化論の歴史的な関連について述べた。現在の生物は生物から発生しているが、この世に最初に現れた生物は化学進化の結果として、自然発生したと考えざるを得ない。この考えは、ギリシャ時代の哲学に端を発し、自然科学の発展とともに、物質論的に根拠を確立しつつある。しかし、生命が誕生したであろうと推定される当時の地球の状態を正確に再現することは至難の業である。なぜなら、宇宙における時空間は、その誕生以来、一方向に非可逆的に変化しており、その中で起こった現象を厳密に再現することは実質的に不可能であるからである。したがって、化学進化における実験的アプローチは、地球科学や惑星科学の進展によって得られた知見などを根拠にして、現状で推定されるもっともらしい条件に近い状況を設定し、そこで起きる化学反応の生成物を、現世において生物の生命活動を支えている基本的化合物と結びつける形で行われる。
村江達士
本稿の第1 回において、生命の起源論と化学進化論の歴史的な関連について述べた。現在の生物は生物から発生しているが、この世に最初に現れた生物は化学進化の結果として、自然発生したと考えざるを得ない。この考えは、ギリシャ時代の哲学に端を発し、自然科学の発展とともに、物質論的に根拠を確立しつつある。しかし、生命が誕生したであろうと推定される当時の地球の状態を正確に再現することは至難の業である。なぜなら、宇宙における時空間は、その誕生以来、一方向に非可逆的に変化しており、その中で起こった現象を厳密に再現することは実質的に不可能であるからである。したがって、化学進化における実験的アプローチは、地球科学や惑星科学の進展によって得られた知見などを根拠にして、現状で推定されるもっともらしい条件に近い状況を設定し、そこで起きる化学反応の生成物を、現世において生物の生命活動を支えている基本的化合物と結びつける形で行われる。