ヒトと動物の共生へ : 第10回 ハトとヒトとの関係史

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渡辺茂

人間との関係が最も古い家畜はイヌということになっているが、ハトの歴史も結構古い。

旧約聖書のノアの方舟の記述に、ノアが方舟からハトを放している場面がある。最初は、まだ洪水が起きたばかりなので、ハトは足に土をつけずに帰ってくる。1週間後にまたハトを放すと、今度はオリーヴの小枝をくわえて戻ってくる。つまり、ノアは水が引いているかどうかを調べるためにハトの帰巣を利用していたのである。この「オリーヴをくわえた鳩」は、図像的象徴であり、近代ではピカソの絵によってよく知られている。ハトを通信手段として用いることは、メソポタミアがその発祥の地とされており、バビロニアには都市間をつなぐ伝書鳩の通信網が作られていた。

ハトというと、まず伝書鳩を思い浮かべる方が多いと思うが、ハトはこのような使役動物としてだけでなく、観賞用としても(クジャクバトなど)、また食用としても飼育されている。このように用途が多様である点はイヌと似ている。イヌもまた使役(猟犬、牧羊犬など)、観賞(狆ちんなど)、食用(チャウチャウ)とさまざまに人間とかかわっている。さまざまなハトの品種があっても、これらは種としては1 種(カワラバト:Columba livia)である。これはイヌがチワワからセントバーナードまで1 種のイヌであるのと同様である。ハトと人間との関係を使役動物、鑑賞動物、食用動物、そして実験動物という観点から見ていこう。