ヒトの心の発達とその精神病理の理解を目指して : 第2回 感情と記憶 ― 海馬における相互作用の解明―

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関野祐子

出来事の経験に強い感情が伴う場合には、その記憶は他の経験に比べてより鮮明で長く持続し、時として忘れられない記憶となる。たとえば、映画の心をうつシーンや緊迫した場面などは印象深く記憶に残る。我々は日常の経験から、喜怒哀楽などの感情が記憶を強化することを知っている。

もし感情がなかったら記憶は一体どうなるのだろうか。鬱病や統合失調症では記憶の障害が見られるという。情動障害における記憶力の低下の原因はさまざまであろうが、感動や関心がなくなることが大きな要因の1つではないかと思われる。なぜなら、健常者でも、つまらない話は瞬く間に記憶から消えるように感じるからである。感情がないとまったく物事を覚えられなくなるわけではない。その場合でも、繰り返すことで記憶は形成される。一方、感情が働けば必ず記憶するわけでもない。

記憶と感情のプロセスは、互いに独立した存在でありながら、それらが同時にうまく働き合うと、瞬時にして強い記憶を形成するしくみを持っている。では、感情と記憶の脳内プロセスはどこでどのように相互作用しているのだろうか。感情が伴う場合の「瞬時に覚えられる記憶」のメカニズムは、「繰り返して覚える記憶」のメカニズムとどのように違っているのだろうか。