乳がん ― 診断・治療の最前線

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商品コード: adma0158

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中村清吾

乳腺は、ミルクを作る小葉と、それを乳首に向かって送り出す乳管という構造が基本となっている。正常の乳管は、筋上皮とその上に乳管上皮という細胞が2層構造になって、きれいに一列に並んでいる。一般的に、乳がんができやすいのは、小葉から少し出たところの乳管の中で、乳管上皮が増殖して、ポリープ状に増え、乳管の中に留まっているのが「非浸潤がん」であり、乳管上皮の外側に染み出るように発育しているのが、しこりとして発見される大多数の乳がんで、「浸潤がん」という。乳がんは、浸潤がんとなってから、乳管周囲の血管やリンパ管の中に入り込み、全身に飛んでいく。こうなって初めて、いわゆる転移を起こす危険性が出てくる(図1)。逆に、非浸潤がんと診断された場合、98〜99%転移を起こすことはない。視触診を中心に検診を行ってきた我が国では、マンモグラフィ検診を積極的に推進してきた欧米に比べ、非浸潤がんの割合がかなり低い状況にあった。

しかし、近年は、マンモグラフィや超音波検診により、1cm以下のしこりで見つかる浸潤がんや、非浸潤がんの割合は確実に増えている。ただし、「石灰化」は、診断をつけるために組織を採取する、いわゆる生検が最も難しいとされる病変であり、とくに、非浸潤がんか浸潤がんの初期なのかどうかがわからないために、かつてはマンモグラフィで、ある程度の位置を推測し、局所麻酔下に切開生検が行われてきた。しかし、切開生検は、時間もかかり、時に大きな手術創を残すこともあり、その結果として、悪性と診断されるのは3割前後であった。