新しい肺がん治療 ―EGFR阻害剤:バイオマーカーを用いて患者を選択する―

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田村研治

我が国のがんによる死亡者数は年間32万人に上り、その中でも肺がんは最も多く、6万人を超えている(厚労省人口動態統計2005年)。男性の肺がんの死亡率は、人口10万人対73人で、胃がん(53人)、肝臓がん(37人)を超え1位である。女性の肺がんの死亡率は、大腸がん(29人)、胃がん(27人)についで人口10万人あたり26人となっており、これも年々増加傾向にある。すなわち、肺がんは我々にとって、最も克服すべき悪性疾患の1つといえる。

肺がんは、大きく2種類に分類される。1つは、「小細胞肺がん」とよばれ全体の15%程度を占めている。小細胞肺がんは神経原基細胞を由来とするがんで、特徴としては、細胞増殖は非常に激しいが、抗がん剤や放射線治療に対する感受性は比較的高いことが挙げられる。一方、その他の85%の肺がんは「非小細胞肺がん」とよばれる。組織型で細かく分類すれば、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどに区分されるが、これらはすべて非小細胞肺がんに属するとされる。これは、小細胞肺がんと非小細胞肺がんが生物学的にきわめて異なる性質をもち、治療体系の面でも大きく2つに区別して発展してきた歴史があるからである。

非小細胞肺がんは、早期(1-2期)に発見すれば、外科的な療法により完治が期待できる。しかし、手術不能である場合完治はほとんど望めない。手術不能非小細胞肺がんの中で、がんの広がりが肺にとどまっているもの(3期)には、放射線と抗がん剤の併用による治療が標準的であり、平均的な生存期間は治療開始より20か月程度である。さらに、がんの拡がりが、脳、肝臓、骨、肺、副腎などの臓器へと進行する場合には(遠隔転移を有する:4期)、全身の抗がん剤投与が治療の主体となり、平均的な生存期間は治療開始より12か月程度である。