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最上善広 今では常識となっている、「細胞の内部はマイナス」という事実は、70年ほど前にゾウリムシを使って初めて確認されたものである。あまり知られていないことであるが、これは日本人の業績であり、当時の東京帝国大学動物学教室の鎌田武雄教授によってなされている。これら以外にも、細胞生物学や遺伝学などにおいて、ゾウリムシが果たした役割はかなり大きい。しかし、ゾウリムシの場合、研究のフロンティアとして登場はするものの、いつのまにか主役の座を他の生きものに明け渡してしまう、そんな役回りでもある。細胞内電位の発見などは端的な例であろう。それは「単細胞」生物という特殊性のためなのであろうか。 「単細胞」というフレーズにはあまりポジティブなイメージはない。だからゾウリムシも単純な能力しか持っていないと考えてしまうが、その遊泳行動を観察するだけでも、かなりな芸達者であることがわかる(図2)。バックをして障害物を避けることができるし、スピードを自在に(?)変化させることもできる。これらによって複雑な走性とよばれる行動が形成されるが、その中でも目につくのが、重力走性行動である。細長い容器に入れると、ゾウリムシが水面直下に凝集するのが観察される。この行動は密閉容器の中でも観察されることから、水面を目指しての走性行動ではないことがわかる。ゾウリムシは「上」を目指すのである。この現象は百年以上も前から知られているが、当初は地面(地球)から離れる走性ということで、負の走地性とよばれていたが、重力方向に対する応答であることから、前述のような用語が用いられるようになった。
最上善広
今では常識となっている、「細胞の内部はマイナス」という事実は、70年ほど前にゾウリムシを使って初めて確認されたものである。あまり知られていないことであるが、これは日本人の業績であり、当時の東京帝国大学動物学教室の鎌田武雄教授によってなされている。これら以外にも、細胞生物学や遺伝学などにおいて、ゾウリムシが果たした役割はかなり大きい。しかし、ゾウリムシの場合、研究のフロンティアとして登場はするものの、いつのまにか主役の座を他の生きものに明け渡してしまう、そんな役回りでもある。細胞内電位の発見などは端的な例であろう。それは「単細胞」生物という特殊性のためなのであろうか。
「単細胞」というフレーズにはあまりポジティブなイメージはない。だからゾウリムシも単純な能力しか持っていないと考えてしまうが、その遊泳行動を観察するだけでも、かなりな芸達者であることがわかる(図2)。バックをして障害物を避けることができるし、スピードを自在に(?)変化させることもできる。これらによって複雑な走性とよばれる行動が形成されるが、その中でも目につくのが、重力走性行動である。細長い容器に入れると、ゾウリムシが水面直下に凝集するのが観察される。この行動は密閉容器の中でも観察されることから、水面を目指しての走性行動ではないことがわかる。ゾウリムシは「上」を目指すのである。この現象は百年以上も前から知られているが、当初は地面(地球)から離れる走性ということで、負の走地性とよばれていたが、重力方向に対する応答であることから、前述のような用語が用いられるようになった。