カエルを宇宙へ ― アフリカツメガエルを用いた宇宙実験 ―

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柏木昭彦,柏木 啓子,古野伸明,新海正

―宇宙研究と両生類―

1972年のアポロ17号を最後に打ち切られていた月への有人飛行が、半世紀ぶりに再開されそうである。アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、2018年に4人の宇宙飛行士を月で1週間滞在させるというのである。さらに、将来は国際協力で月面基地を建設し、そこを拠点に他の天体への探査に乗り出すという。

地球と異なる重力環境下に長期間置かれた時、ヒトは健康で生活することができるのか、正常な子孫を残すことができるのかなど、解決しなければならない問題は多い。両生類は、生物に対する重力の影響を調べるのに格好なモデル生物としてよく用いられてきた。その第一の理由として、両生類が占める進化史上の独特な位置が挙げられる。

両生類は、デボン紀に出現した最初の陸生脊椎動物で、その後、爬虫類、鳥類、哺乳類へと進化していった。陸生化を成功させるのには、えら呼吸から空気呼吸への変換、乾燥への対応、窒素代謝物の処理などのしくみはもとより、重力を許容するための支持器官・組織を作り出すことが必要であった。その進化の跡は、とくに無尾両生類の変態過程において再現されている。水中に棲むオタマジャクシは、変態期間中に、重力変化に相応した丈夫な四肢を含めて陸上での生活を営むのに必要な構造を次々に獲得してカエルになるのである。

無尾両生類は、受精卵から発生を開始し、胚、オタマジャクシへと成長し、その後、変態期を通り抜けて幼若ガエルに、そして成熟期に達したカエルは子孫を作り、やがて老化し、最終的には死に至って一生を終える。筆者らは、いろいろな時期の卵や胚、オタマジャクシを用いて過重力に対する影響を調べてきたので、これまでに得られた結果についてここで紹介する。