メダカを用いた宇宙実験 ― 宇宙での子づくり―

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井尻憲一

―宇宙で子孫を増やせるか?―

1994年に日本人宇宙飛行士、向井千秋さんとともに、日本のメダカがスペースシャトルで15日間の宇宙旅行をした。4匹のメダカは、脊椎動物として初めて雌雄による産卵行動を宇宙で行い、産卵された卵は宇宙飛行中に誕生(ふ化)し、赤ちゃんメダカとなった。この宇宙メダカ実験について、その準備、宇宙での様子、そして地球へ帰ってからと順を追って述べる。

宇宙実験が可能になった初期から、宇宙でも子孫を増やせるかは人々の興味を引くテーマだった。とくに、人類が将来宇宙で暮らすことを考えると、脊椎動物での実験が必要となる。脊椎動物とは、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類のことであり、宇宙での生殖行動の実験に最初に白羽の矢が立ったのは当然ながら魚だった。

地球で魚が泳いでいる時を考えてみればよい。水面にいることもあるが、水中にじっとしていることもある。この時、魚の体重はその体積分の浮力と釣り合って、いわば無重力に近い状態にあるはずだ。よって、魚なら無重力(微小重力ともいう)の宇宙でも生殖行動ができるのではないか、そして、無重力で受精した卵から体ができていく様子(発生)も観察できるだろうと考えられたのである。

1973年に、フンジュラスという小魚が宇宙へ行っている。ところが宇宙に着くなり(つまり無重力になるなり)、この小魚はぐるぐると回転(ルーピング)を始めてしまった。魚の場合、これは宇宙酔いに相当する行動である。これでは産卵行動など到底できず、魚でも宇宙での生殖行動は無理だということになっていた。