水棲生物を用いた宇宙実験 ― 水棲生物からヒトへ―

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石岡憲昭,益川充代,大森克徳

―なぜ水棲生物が宇宙へ?―

日本を代表する淡水魚にメダカがいる。この魚が宇宙へ行き子を誕生させたことは有名であり、地球に帰還した「宇宙メダカ」の子孫は、現在も日本で生存、飼育されている。

メダカのゲノムが日本の研究者の手により解読された。約7億の塩基配列から2万余りの遺伝子を解読した2)。そのうち、約3千個はメダカ特有の遺伝子として新たに発見されたが、約8割の遺伝子がヒトの遺伝子と類似していることが明らかになった。さらに、脂肪肝や腎臓病などヒトの疾患と共通する関連遺伝子が見つかるなど、メダカやゼブラフィッシュなどの小型魚類はヒトの疾患モデルとして注目されている。それはまた、宇宙環境がヒトに及ぼす影響を研究するためのヒトに代わる「モデル生物」としての有用性を示している。

今後、人類がその活動、滞在、居住の場を宇宙に求める場合に必要な有人技術開発に欠かせない宇宙医学生物学研究には、基礎生物学的データの取得が必要である。地上でも医学研究に使用されている哺乳動物、とくにラットやマウスなどげっ歯類の動物実験が宇宙でも求められている。しかしながら、宇宙で長期間継世代的にげっ歯類を飼育することは難しい。食餌、給水やし尿、汚物の処理の問題もあるが、微小重力下では何よりも授乳、いわゆる子育てが大変なことである。一方、米国NASA の目標が火星となり「Human Exploration」にシフトして以来、ヒト(宇宙飛行士)を対象とした有人探査のための技術研究開発が主となり、ヒト以外の生物を用いる基礎生物学的宇宙実験が縮小されて久しく、げっ歯類の小動物実験装置の開発も中止された。ヨーロッパのESAやイタリアのASIでは、げっ歯類の実験装置を開発し独自に実験を計画している。そのような状況においてこそ、日本は、宇宙実験や装置開発の経験と実績のある水棲生物をヒトに代わるモデル生物として利用し、日本独自の特色ある有人探査に向けた基礎医学生物学研究を展開し推進することが重要であり1つの方向性である。