ヒトの心の発達とその精神病理の理解を目指して : 第1回 情動発達とその障害発症機構 ―扁桃体の役割―

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西条 寿夫,小野武年

最近の研究から、これら情動機能は、生まれつきのものではなく(すなわち、胎生期における脳の形成だけでなく)、社会生活における経験と学習により少なくとも思春期まで長期にわたって発達していくことが示唆されている。この脳発達過程が障害されると種々の情動・行動障害が起こると推測され、とくに発生率が100人に1人といわれる統合失調症や異常行動を呈する精神病質、ならびに他人の感情や考えを理解できない自閉症などでは、扁桃体や海馬体の発達が障害されていることが示唆されている。これらのことから、情動発達とその障害の発症機構を解明することは、社会の要請を受けた重要な研究課題であるとともに、ヒトの心の発達とその精神病理の理解に大いに貢献すると考えられる。われわれ富山大学医学薬学研究部ならびに生命融合科学教育部を中心とする研究チームは、JST(科学技術振興機構)の助成によるCREST(戦略的創造研究推進事業)により、「情動発達とその障害発症機構」を、ヒトだけでなく動物を用いて分子・遺伝子、細胞、行動レベルで総合的に解明することを目標にしている。本稿では、本シリーズのイントロダクションとして細胞、行動レベルの研究を中心に情動発現と社会的認知機能における扁桃体の役割を紹介したい。