生命の“もと”は宇宙から? ― 高分子態複雑有機物と生命の起源:がらくた分子から生命へ ―

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小林憲正

― 生命の起源の古典的シナリオ―

生命は、原始地球上での物質進化(化学進化)の結果として誕生した。現在の生命の起源シナリオは、すべてこの前提のもとに語られる。このような化学進化シナリオは、1920年代にオパーリンおよびホールデンによりまず提唱された。

当初、化学進化の過程は何億年もの長い時間を要するために、その実験的検証は困難と考えられていた。1953年、シカゴ大学大学院の学生だったミラー(S. L. Miller)は、指導教員のユレーの原始地球大気モデルに従い、メタン・アンモニア・水素・水蒸気の混合気体中で火花放電を行い、その生成物中にアミノ酸を検出した。彼は、さらに放電実験を行い、後の論文では生成物中のシアン化水素およびホルムアルデヒド濃度の測定結果から、シアン化水素、アルデヒド、アンモニアからアミノニトリルを経てアミノ酸が生成する、とする「ストレッカー合成」機構を提案した。

ミラーの実験に触発され、多くの研究者が生命の起源(化学進化)の実験的研究を開始した。そして1950〜70年代には、アミノ酸からのペプチドの合成、核酸塩基と糖からのヌクレオシドの合成、ヌクレオシドとリン酸からのヌクレオチドの合成、(修飾)ヌクレオチドからのオリゴヌクレオチドの合成などが、次々と報告された。

これらの結果から、図1に示すような化学進化シナリオ(以降、古典的シナリオとよぶ)が提案され、今日に至るまで「化学進化」の代表的な考え方として教科書などで紹介されている。さらに、1980年代には、最初の生命はRNAであったとする「RNAワールド説」がギルバートにより提唱され、多くの分子生物学者の支持を集めているが、これもRNA分子が図1のような段階的な合成経路により生じたことが暗黙の前提となっている。