GADV仮説から見えた生命誕生への新たなシナリオ

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池原 健二

―生命の起源の謎にそびえる壁―

現在の地球上には、空中、地上、水中、地中などほとんどの場所で多様な生命が懸命に生きている姿を見ることができる。しかし、姿や形は違っても、この地球上に棲んでいる生き物たちが生きていける根拠、すなわち、生命の基本システムは同じである。この基本システムについては、DNAの二重らせん構造が明らかになったときに、クリック(Francis Harry Compton Crick(1916-2004))がこの遺伝情報の流れをセントラル・ドグマと名づけて提案した。これを簡単に書き表したのが図1である。その後、RNAファージやタバコモザイクウイルスなどのRNAウイルスではRNAが複製すること、エイズウイルスやRNA腫瘍ウイルスなどではRNA情報をDNAの塩基配列へと逆転写するものも発見されている(図1中の青色破線)。そのため、このセントラル・ドグマは間違っているといわれたこともある。しかし、それらはあくまでも例外的なものと解釈すべきであり、ほとんどすべての生物は、図1の黒色の矢印で示された遺伝情報の流れに従って生きている。このことは、生命の起源を明らかにするためには、まずは、セントラル・ドグマで示される遺伝子や遺伝暗号、タンパク質からなる生命の基本システムの成立過程を理解することが重要であることを意味している。しかし、現時点では生命の起源や生命の基本システムの成立過程を解明するための作業の前にいくつかの大きな難題が横たわっている。その1つが、多様な遺伝子がどのようにして形成されてきたのかを説明することであり、2つ目は、地球上の生物のほとんどが使用している普遍遺伝暗号の起源と進化過程を説明することである。さらに、それまでには存在しなかった新たなタンパク質の生成過程を説明することも困難な問題として残っている。それら3つの問題に加えて、遺伝子とタンパク質の間には、遺伝子がなければ活性なタンパク質を生み出すことができず、タンパク質がなければ遺伝子機能を発現できないという、いわゆるDNA(遺伝子)とタンパク質(酵素)の間に見られる「ニワトリと卵」の関係が存在する。これも生命の起源を解明するためには克服しなければならない問題の1つである。