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篠原明男 2010年は「生物多様性」という言葉がマスメディア上に何度も登場した。名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)を契機に、クジラやマグロなどの水産資源の絶滅危惧問題など、生物多様性がキーワードの1年であった。 Biophilia誌上でも、生物多様性(第23号)やクジラ(第22号)に関する特集が組まれた。 しかし、何気なく使っている「生物多様性」という言葉は、とても複雑な定義を持つ。日本における生物多様性に関する法律である「生物多様性基本法(平成20年法律第58号)」では、生物多様性について「様々な生態系が存在すること並びに生物の種間及び種内に様々な差異が存在することをいう」と定義している。 すなわち、生物の多様性は、「生態系」「種間」「種内(=個体)」の3つの段階における「差異」のことであるという。しかしながら、同法において差異という言葉は再び登場しない。では、その差異とは一体なんであろうか? 本稿では、私が研究材料としているモグラを例として、生物の多様性の一端を考えてみたい。
篠原明男
2010年は「生物多様性」という言葉がマスメディア上に何度も登場した。名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)を契機に、クジラやマグロなどの水産資源の絶滅危惧問題など、生物多様性がキーワードの1年であった。
Biophilia誌上でも、生物多様性(第23号)やクジラ(第22号)に関する特集が組まれた。
しかし、何気なく使っている「生物多様性」という言葉は、とても複雑な定義を持つ。日本における生物多様性に関する法律である「生物多様性基本法(平成20年法律第58号)」では、生物多様性について「様々な生態系が存在すること並びに生物の種間及び種内に様々な差異が存在することをいう」と定義している。
すなわち、生物の多様性は、「生態系」「種間」「種内(=個体)」の3つの段階における「差異」のことであるという。しかしながら、同法において差異という言葉は再び登場しない。では、その差異とは一体なんであろうか? 本稿では、私が研究材料としているモグラを例として、生物の多様性の一端を考えてみたい。