動物実験による放射線発がん

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小木曽洋一

 放射線は目には見えないが、物質を電離(イオン化)する作用を持つエネルギーの流れであり、細胞(とくにDNAを含む細胞核)に吸収されると、がん等さまざまな健康影響が現れることがわかっている。私たちの身の回りには、大地や宇宙からの自然放射線、診断や治療に用いられる医療用放射線、品種改良、殺菌、非破壊検査等産業分野で用いられる種々の人工放射線源が多数存在し、身体のなかからも必須構成元素であるカリウムから微量の放射線が出ており、私たちは放射線に囲まれて生活しているといっても過言ではない。このような微量の(低線量)放射線に長期間被ばくしたら、がんのような健康影響はないのだろうかという不安を持つ人や、妊娠や産まれてくる赤ちゃんへの影響を心配する女性もいるであろう。本稿では、放射線の生物への影響、とくに発がんについて、動物実験でこれまでに得られている知見を紹介する。