0 買い物かご
現在カート内に商品はございません。
アドスリー eBOOKS 電子書籍、雑誌等のアドスリー総合オンライン書店
営業時間 AM10:00~PM4:00(土日祝日を除く)
Menu
加算ポイント:3pt
商品コード: adma0345
¥ 315 税込
関連カテゴリ
三浦洋 「命とは何か」という問題を考えるとき、<物>と考えるか、<事>と考えるかが大きな分かれ目になることは前回述べた。<物>派と<事>派が対峙するのは、実は現代に限ったことではなく、古来、哲学の世界では一般的であった。とくに古代ギリシャ哲学の黎明期には、命を血液や心臓と同一視する<物>派が有力だったようである。なるほど、血液を失えば動物は命を失い、心臓が止まれば命はなくなる。したがって、命を血液や心臓と同じ<物>と見る考え方は、現実の経験に支えられており、理屈としても一定の有効性を持っている。 ここで注目されるのが、欧米の言語では「心臓」と「心」が同じ単語だという点である。ドイツ語のHerz、フランス語のcoeur、ポーランド語のserceを見ればわかるように、インド・ヨーロッパ語族の中心的位置を占めるゲルマン語、ロマンス語、スラブ語においては1つの単語が「心臓」と「心」の意味を併せ持つ。つまり、「命」の座である心臓は、「心」の座でもあるというわけだ。では、心臓を仲立ちに「命」と「心」は合一するのだろうか。
三浦洋
「命とは何か」という問題を考えるとき、<物>と考えるか、<事>と考えるかが大きな分かれ目になることは前回述べた。<物>派と<事>派が対峙するのは、実は現代に限ったことではなく、古来、哲学の世界では一般的であった。とくに古代ギリシャ哲学の黎明期には、命を血液や心臓と同一視する<物>派が有力だったようである。なるほど、血液を失えば動物は命を失い、心臓が止まれば命はなくなる。したがって、命を血液や心臓と同じ<物>と見る考え方は、現実の経験に支えられており、理屈としても一定の有効性を持っている。
ここで注目されるのが、欧米の言語では「心臓」と「心」が同じ単語だという点である。ドイツ語のHerz、フランス語のcoeur、ポーランド語のserceを見ればわかるように、インド・ヨーロッパ語族の中心的位置を占めるゲルマン語、ロマンス語、スラブ語においては1つの単語が「心臓」と「心」の意味を併せ持つ。つまり、「命」の座である心臓は、「心」の座でもあるというわけだ。では、心臓を仲立ちに「命」と「心」は合一するのだろうか。