昆虫のふしぎを探る : 第3回 植物の防御機構と昆虫 ―植物乳液をめぐる植物と昆虫の攻防関係―

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今野浩太郎

植物は、チョウやガの幼虫(いわゆるイモムシ・ケムシ)やハムシ、ハバチ幼虫をはじめとする種々の植食昆虫に食べられてしまうリスクに、常にさらされている。植物は自ら移動できないので、逃げることができない。では、植物は昆虫に食べられるがままになっているかというと、そうではない。

植物は昆虫に有毒であったり、消化や成長を阻害するアルカロイドやタンニンをはじめとする2次代謝物質や消化酵素阻害タンパク質(プロテアーゼインヒビター、アミラーゼインヒビター)などを植物体内に蓄積していたり、あるいは、棘や毛など組織・構造を発達させて昆虫に食べられにくくしていたりと、種々の防御・対抗策を発達させてきた。

筆者は最近、多くの植物が傷口から分泌する白い液である乳液が、さまざまな防御物質を高濃度含み、植物が植食昆虫を撃退する効果的な防御機構として重要な役割を持つことを明らかにした。一方で、乳液を出す植物を専門に食べるスペシャリストの昆虫は、乳液による植物の防御に巧妙に適応していた。本稿では、植物乳液をめぐる植物と昆虫の攻防関係について、筆者が最近発見した事実をもとに記す。