鯨類の進化史とその道のり

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一島啓人

クジラと聞いて、みなさんはいかなる動物を思い浮かべるだろうか。大きくて、優雅に泳ぎ、頭から潮を吹く動物だろうか。それとも、暗い深海で勇壮に巨大イカと闘う頭でっかちの動物だろうか。それぞれの胸に思い思いのイメージがあるかと思うが、それもそのはずで、現在生きているクジラは80種以上を数えるのである。大きさも姿もいろいろだ。

クジラは、生物学的にはハクジラとヒゲクジラに分けることができる。ヒゲクジラは概して大型で、最大で30mもあるシロナガスクジラを含む仲間である。一番小さいものでも6m程度ある。口の中に歯がなく、代わりに「ヒゲ板」と呼ばれるケラチンの特殊な器官を持ち、それを使って小魚やプランクトンを食べる。種類はあまり多くない。それに対して、ハクジラはその名の通り、歯を持っており、全鯨種の8割以上を占めるほど多様化している。大きさにおいては、マッコウクジラやシャチ、アカボウクジラ類など、10mに近いかそれ以上の種類を含んでいるものの、大半は「イルカ」と呼ばれる小型の種類から成り立っている。主食は魚かイカである(シャチは獣肉も喰う)。

クジラは海の中に暮らすが、哺乳類である。魚と違って肺で呼吸をし、4室に別れた心臓を持ち、子宮で子どもを育て、産まれた後はお乳も与える。痕跡的かつ部分的ながら、毛も生えている。骨をみると、頚椎(首の骨)は7つで、耳小骨(中耳にある骨)も3つある。いずれも紛うかたなき哺乳類の特徴である。尻尾のつき方も、尾翼が水平に伸びる点で魚と異なる。

哺乳類は今をさること、2億3,000万年ほど前に地球上に現れ、恐竜時代を通じてあまり大型化することはなかったが、それなりの多様化を遂げながら進化を続けた。そして、今からおよそ6,500万年前に恐竜が地上から姿を消すと、爆発的という表現が似合うほどの勢いで様々な空間に生活の場を広げ、それに伴い形態も多様化した。陸上での放散は言うに及ばず、空にはコウモリが進出し、なかには海に“戻った”ものもいた*。その1つがクジラである。