インフルエンザの歴史と現実

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松本慶蔵

突然寒気がした後に38度以上の発熱や頭痛、筋肉痛、関節痛が出現し、それと一緒か少し遅れて、鼻づまりや喉の痛み、そして咳が出現する病気がインフルエンザである。

この症状は、以前は“風邪の重い病気”と捉えられていた。平安時代から知られており、“しわぶきやみ”と呼ばれていたといわれる。“しわぶき”とは咳、“やみ”とは病気のことである。江戸時代には“谷風邪”(横綱の谷風)や“お染風邪(お染久松)”のように有名人の名がつけられて、流行の様子が今に伝わっているものもある。

20世紀に流行したインフルエンザのなかでもっとも有名で、死亡者数も多かったのは“スペインかぜ”である。1918〜1919年(大正8年頃)と、ちょうど第一次世界大戦の時期に大流行が始まり、アメリカから次いで戦地の欧州へと波及し、中立国だったスペインで流行したが、この大戦に参加していた国の記者がスペインからこの流行を報じたために“スペインかぜ”という名称が定着してしまった。

死亡者数は世界で2,000〜5,000万人といわれているが、日本でも49万人が死亡している。当時の人口は現在と比べると著しく少なかったが、感染した人の2%が死亡した事実からも、その猛烈さは容易に想像できるであろう。

このように、インフルエンザとヒトの関わりは古い歴史を持ち、現在に至るまで一般に広く知られている病気の1つといえる。本稿では歴史的な話を交えながら、インフルエンザの実態についてまとめていきたい。