ヒトと動物の共生へ : 第11回 軽井沢ベアドッグ物語 ―人とクマとの親善大使になれるか?―

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田中純平

2006 年の夏、全国各地で「クマ」が人里に頻繁に出没し、多数のクマが捕殺された。その数は例年の2 倍以上の4,300 頭を超えた。メディアの衝撃的な記事や映像とともに記憶に残っているのではないだろうか。

さて、今回の話題の中心地は長野県の東端にある軽井沢町。浅間山南麓に広がる日本有数の別荘地としてはあまりに名高いが、実は本州に生息するツキノワグマ(以下、クマ)の分布の真只中であり、クマの情報件数が年間300 件に達する町でもある。

しかし、これまで軽井沢町は、他の自治体のように「ただクマを撃ち殺す」ことはせず、まったく異なるクマ対策を進めてきた。同町では1990年代後半からクマによるゴミ荒らしが拡大するとともに、人身事故が発生する危険性が懸念されてきた。このような状況で町は「クマとの棲み分けながらの共存」という方針を示し1)、2000 年から「クマ保護管理対策事業」をスタートさせた。我々「ピッキオ」は、同町で1995年から地域密着型のエコツーリズムを推進する中で、地域生態系の保全活動を実践してきた実績があり、本事業を請け負うこととなった。

それから8 年、「人とクマとが共存する地域社会」を目指して、我々はさまざまな取り組みを行ってきた。その中で活躍してきたのが「カレリアン・ベアドッグ(以下、ベアドッグ)」(図1)であった。そこで本稿では、軽井沢の人とクマとの軋轢史や、ベアドッグ導入の経緯、その育成と実践活動について紹介したい。