ポリ塩化ビフェニルによる器官の発達、機能維持への影響 ―甲状腺ホルモンを介するPCB類の作用機構―

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鯉淵 典之,岩崎俊晴

甲状腺ホルモンは、発達期の中枢神経系をはじめ、多くの器官の発達や機能維持に不可欠である。胎生期から周産期において、母体の甲状腺機能低下症や胎児・新生児の甲状腺ホルモン合成障害による甲状腺ホルモン欠乏は標的器官の発達障害を生ずる。一方、過去に生じた大量曝露事故や疫学的調査、そして動物実験などから、発達期のポリ塩化ビフェニル(PCB)類の曝露による生体への影響の一部が甲状腺ホルモン系を介している可能性が示唆されてきた。

当初、PCBは甲状腺に作用して甲状腺ホルモン分泌を低下させるか、もしくは「疑似リガンド」として甲状腺ホルモン受容体や血中甲状腺ホルモン輸送タンパクに作用し、甲状腺ホルモン作用を拮抗的に阻害すると考えられてきた。しかし、近年の研究により、PCB類の作用機構には従来考えられていた仮説とは異なる経路があることが明らかになりつつある。

本稿では甲状腺ホルモン作用の分子基盤を解説するとともに、PCB類の甲状腺ホルモン系への影響について最近の知見を紹介する。