内分泌かく乱物質が及ぼす発生、成長への影響

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井口 泰泉,中村武志

レイチェル・カーソンの『沈黙の春』で指摘された鳥類での農薬の残留性と毒性影響、食用油に混入したオイルに含まれていたポリ塩化ビフェニル(PCB)類やダイオキシン類などによる「カネミ油症」、ベトナム戦争に使われた枯葉剤に含まれたダイオキシン類の毒性影響、有機水銀による「水俣病」、薬害の「サリドマイド」や流産防止を目的として処方された合成女性ホルモンによる「DESシンドローム」など、動物だけでなくヒトにも化学物質の影響が及んだ例が多く知られている。現在では、残留性が高く毒性の強い物質については、化学物質審査規制に関する法律などを基に製造や使用は禁止されている。

シーア・コルボーンらの『奪われし未来』(1996)では、化学物質がホルモン類似作用、あるいはホルモン阻害作用を介して生物に影響を及ぼす可能性が指摘され、「内分泌かく乱物質」あるいは「環境ホルモン」問題として調査・研究が進められてきた。化学物質の毒性は、成体を用いた急性毒性だけでは不十分であり、毒性は弱くても妊娠中の母親を介した胎児への曝露や、母親に蓄積された物質の卵への移行、胚発生中の影響についての研究が必要である。現在では、化学物質の影響を考える局面として、ホルモン受容体などを介した、発生中での細胞・組織間のシグナル伝達への干渉が将来に影響を及ぼす可能性が指摘され、大人での病気は胎児期に原因があるという、「Fetal Basis for Adult Disease」の概念に基づいた研究が始まっている3)。ここでは、化学物質の動物への発生内分泌学的影響について解説する。