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柳茂 複雑な神経の配線はどのようにしてできるのか? 私たちが物事を考えたり記憶したりすることや、泣いたり笑ったりする感情は、脳の中で精緻に構築された神経の配線(ネットワーク)がその基盤となっている。どのようにしてこの複雑な神経のネットワークはできるのであろうか?神経細胞は発生過程において、神経突起(軸索)を伸展して正しい標的細胞を間違うことなく見つけてシナプス(神経細胞間の情報伝達部)を形成する。軸索の先端には成長円錐とよばれる扇型の特殊な構造体が存在し、この成長円錐が外界を感知するセンサーとして働き、道しるべに案内されて標的を見つけることができる。この道しるべには、“こちらに来てはいけない”と命令を出す反発因子と、“どうぞこちらに来て下さい”と誘う誘因因子の2 種類がある(図1)。 反発因子には、いくつかの分子が見つかっているが、その中でもセマフォリンとよばれるタンパク質がよく知られている。セマフォリンという名前は、手旗信号を意味する「セマフォ(semapho)」に由来している。成長円錐は反発因子であるセマフォリンと出会うと、急速に崩壊して進行方向を反転し逃げていこうとしたり、あるいは、軸索が退縮したりする(図2)。反発因子によって標的付近までナビゲートされた成長円錐は、次に誘因因子を認識して最終的にシナプスを形成すると考えられている1)。セマフォリンの重要な役割を示す科学的根拠の1 つとして、セマフォリン3A を欠損したマウスでは、神経ネットワークはバラバラに乱れてしまい、生後まもなく死んでしまうことが報告されている2)。私たちの脳の複雑な神経ネットワークは、このような分子群によって制御され、形成されるのである。
柳茂
複雑な神経の配線はどのようにしてできるのか?
私たちが物事を考えたり記憶したりすることや、泣いたり笑ったりする感情は、脳の中で精緻に構築された神経の配線(ネットワーク)がその基盤となっている。どのようにしてこの複雑な神経のネットワークはできるのであろうか?神経細胞は発生過程において、神経突起(軸索)を伸展して正しい標的細胞を間違うことなく見つけてシナプス(神経細胞間の情報伝達部)を形成する。軸索の先端には成長円錐とよばれる扇型の特殊な構造体が存在し、この成長円錐が外界を感知するセンサーとして働き、道しるべに案内されて標的を見つけることができる。この道しるべには、“こちらに来てはいけない”と命令を出す反発因子と、“どうぞこちらに来て下さい”と誘う誘因因子の2 種類がある(図1)。
反発因子には、いくつかの分子が見つかっているが、その中でもセマフォリンとよばれるタンパク質がよく知られている。セマフォリンという名前は、手旗信号を意味する「セマフォ(semapho)」に由来している。成長円錐は反発因子であるセマフォリンと出会うと、急速に崩壊して進行方向を反転し逃げていこうとしたり、あるいは、軸索が退縮したりする(図2)。反発因子によって標的付近までナビゲートされた成長円錐は、次に誘因因子を認識して最終的にシナプスを形成すると考えられている1)。セマフォリンの重要な役割を示す科学的根拠の1 つとして、セマフォリン3A を欠損したマウスでは、神経ネットワークはバラバラに乱れてしまい、生後まもなく死んでしまうことが報告されている2)。私たちの脳の複雑な神経ネットワークは、このような分子群によって制御され、形成されるのである。