外来生物の生物学

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五箇公一

外来生物Alien speciesとは、人の手によって本来の生息地から、異なる生息地に移送された生物をさす。人為的要因によらず、気流や海流にのって移動する昆虫やエチゼンクラゲ、あるいは自力で海や大陸を渡る鳥類などは外来生物に当てはまらない。また、外来生物は外国産の生物種というイメージが強いが、例えば沖縄の生物を北海道に移動させた場合など、国内の特定地域に生息する生物を、国内の別の場所に移送させた場合も外来生物の定義に当てはまる。生物の種や個体群の生息地には地理的区分があり、その区分境界線(これを生物地理境界線という)を超えることが外来生物の定義であり、人間社会が人為的に定めた国境線は重要ではない。

多くの外来生物は、移送先の環境になじめず、定着できないが、一部に新天地の環境に適応し、本来の生息地よりも繁栄して、在来の生物相や生態系に悪影響を及ぼすものが存在する。こうした外来生物を侵略的外来生物Invasive alien species(IAS)と呼ぶ。現在、世界レベルで、侵略的外来生物による生物多様性の減少が問題とされている。国際自然保護連合IUCNは、侵略的外来生物を「生息地の破壊・悪化」および「乱獲」にならぶ、野生生物の三大絶滅要因の一つと位置づけている。本稿では、日本を取り巻く外来生物の問題について具体的事例をあげて紹介したい。