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山田和彦,石川義典 移植医療の成績が向上する一方で、移植用臓器の不足は世界各国共通の問題となっている。日本でも1997年10月に「臓器の移植に関する法律(臓器移植法)」が施行され、脳死患者からの臓器移植が始まった。しかし、第一例目の脳死臓器提供から本年で10年になるが、2009年4月現在において臓器提供総数は81例に留まり、毎年多くの移植待機患者が移植を受けることなく亡くなっているのが現状である。早期より脳死移植を積極的に推進してきた移植医療先進国のアメリカにおいても、図1に示すように深刻なドナー不足が問題となっている。このことは、日本国内に同様の脳死移植システムを導入しただけでは、国内の臓器不足は解消されないことを意味している。 この問題の解決の糸口として、近年、再生医療の分野から人工多能性幹細胞(iPS細胞)が脚光を浴びてはいるが、高度な機能を有する臓器レベルでの実用化はiPS細胞培養技術のみでは困難と考えられる。そこで、ドナー不足を解決する最も現実的な方法として、医用動物の臓器を用いる異種移植が挙げられ、これは最近の成果により“夢を託す”段階から、臨床応用を視野に入れられる段階にまできている。 本稿では、異種移植の利点や解決すべき問題点を解説し、筆者の実験例を中心として異種移植の研究の進歩を紹介する。
山田和彦,石川義典
移植医療の成績が向上する一方で、移植用臓器の不足は世界各国共通の問題となっている。日本でも1997年10月に「臓器の移植に関する法律(臓器移植法)」が施行され、脳死患者からの臓器移植が始まった。しかし、第一例目の脳死臓器提供から本年で10年になるが、2009年4月現在において臓器提供総数は81例に留まり、毎年多くの移植待機患者が移植を受けることなく亡くなっているのが現状である。早期より脳死移植を積極的に推進してきた移植医療先進国のアメリカにおいても、図1に示すように深刻なドナー不足が問題となっている。このことは、日本国内に同様の脳死移植システムを導入しただけでは、国内の臓器不足は解消されないことを意味している。
この問題の解決の糸口として、近年、再生医療の分野から人工多能性幹細胞(iPS細胞)が脚光を浴びてはいるが、高度な機能を有する臓器レベルでの実用化はiPS細胞培養技術のみでは困難と考えられる。そこで、ドナー不足を解決する最も現実的な方法として、医用動物の臓器を用いる異種移植が挙げられ、これは最近の成果により“夢を託す”段階から、臨床応用を視野に入れられる段階にまできている。
本稿では、異種移植の利点や解決すべき問題点を解説し、筆者の実験例を中心として異種移植の研究の進歩を紹介する。